『HTML入門第2版』(ローラ・リメイ他著,武舎広幸+久野禎子+久野靖訳,プレンティスホール出版)のページです.
お買いあげいただいた方,どうもありがとうございます.
この本は「Teach Yourself Web Publishing with HTML 4 in 14days」を翻訳したものですが,原著が1124(!!)ページもあるという大著なので,そのままでは持ち運ぶのも参照するのも大変すぎるため2分割して翻訳することとなり,その前半部分に対応しています(後半は「続・HTML入門 第2版」として刊行予定です).しかし実は,上記の原著はもともとは同一著者による「Teach Yourself Web Publishing with HTML in7days」(邦訳: 「HTML 入門 ---- WWWページの作成と公開 ---」),「Teach Yourself More Web Publishing with HTML in 7days」(邦訳: 「続・HTML入門 ---- 新機能,CGI,Webの進化 ---」)を合冊したもの(の改定版)なので,先祖返りということでごく自然に正・続の2冊に分けることができました(上記2冊の翻訳も私共同一訳者の手になるもので,その縁でこの本も訳させて頂いているわけです).具体的には,この本はHTML本体の解説,続編がフォームやCGIなど動的コンテンツの技術とサーバやサイトの管理になっています.
さて,最初に『HTML入門』の訳書を刊行したのは2年半前(1995年6月)だったのですが,この間にWWWをめぐる状況は極めて目まぐるしく変化して来ました.それらをいちいち顧みることはしませんが,変化のうちでもっとも重要なのは,WWWが「新しい出版媒体」として世の中に認知されて来たことだと思います.「そんなことを言ってもHTMLはHTMLで,タグは増えたがその本質は昔から変わっていないのでは?」と思う人もいるかもしれません.しかし,昔の単に「誰でも華やかな画像やテキストを世界中に公開できる」手段だったWWWと,現在の「多くの人がその上での出版を生業としていて,それに輪を掛けて多くの人が出版される情報に依存している」WWWとでは,質的にまったく違ってきています.
著者のローラ・リメイさんがテクニカルライターであったためでしょうか,旧版の時から『HTML入門』はこの「出版としてのWWW」というスタンスを一貫して維持しており,その点ではきわめて特異なHTMLの入門書でした.この新版でもその特徴にはますます磨きがかかっていると思います.もちろん,だからといってタグの使い方といったことがらを軽視するわけではなく,これら技術的な内容も懇切丁寧に説明されています.しかしそれと同じくらいていねいに,WWWで情報を公開するとはどういうことか,どうやって読み手に意図が伝わるページを設計するか,といった内容も取り上げているのです.ですから,この本は既にHTMLを知っていて,いろいろページを公開している人にも,是非一読してもらいたい本だと思います.
この本では技術的な部分についても,もちろん最新の内容を取り入れています.肝心のHTMLについてはW3CのHTML 4.0推奨規格案に基づいており,従来の規格(HTML 2.0,HTML 3.2)との違いについてもそれぞれの説明項目ごとにきちんと説明されています(原著刊行時点ではHTML 4.0規格はドラフトだったのですが,翻訳時に推奨規格案を反映するように手を入れ,さらに付録で解説を追加しました).また,Netscape Communicator(Navigator)4やMicrosoft Internet Explorer 4のDynamic HTML,直列スタイルシートレベル2(CSS2)などの新しい話題もそれぞれ章を設けて説明してあります.
しかし技術的な部分についても,この本では単に新しい機能を説明する,というレベルには留まっていません.大上段に「WWWの将来」について論じた章があるわけではないのですが,新機能の説明ごとに,なぜこのような変化があるのか,その目指す方向は何か,という所まで踏み込んで解説されているのです.これらの点は特に,HTMLに新機能が加わるごとにそれを追いかけて目新しいページ作りに打ち込んで来た人には盲点になっていると思います.たとえばHTML 3.2ではページの見栄えを制御できるように多くの属性やタグが追加されましたが,HTML 4.0では一転してこれらをなくす方向に進んでいます.驚きましたか? 驚いた人はぜひ,この本を一読して頂きたいと思います.
最初のテーマに戻ってまとめると,WWWは出版媒体としての重みを日に日に増しており,そのことがHTMLの進化の方向にも現れています.これらの進化は一見すると従来の「機能増強」の延長であるかのようにも見えるのですが,実はそこには大きな質的変化が内在しているのだと思います.もちろん,WWWの将来がどうなるかは,著者にも訳者にも本当には分からないわけですが,少なくともこのような大きな変化の節目にタイミングよくこの本を刊行できることは嬉しく思っています.
最後に,この本を紹介してくださり,翻訳の機会を与えてくださった,三輪幸男さんをはじめとするプレンティスホール出版の皆様に感謝いたします.また,W3C/慶應義塾大学の,あさだたくやさんと石川雅康さんには,それぞれLynxの状況とHTMLの近況などについてご教示をいただきました.ここに感謝いたします.
1997年12月